たぬきのMusic Chronicle~第7回~佐野元春Part4

ナポレオンフィッシュと泳ぐ日

佐野元春にとって唯一の日本語タイトルアルバムであるこのアルバムは、作品的に大きな変化を見せた。

ハートランドの演奏は減り、スポークン・ワードをアルバムに入れた。曲調はバラエティに富んでいる。トータルテーマはないのだが、聞き込んでいくと味わい深い。このアルバムは、内包された悩みを解放させながら、自己批判と内省に戻る内容なのだ。

タイトルチューンのイントロの妙なハイテンションで解放させて、自分自身を奮い立たせるようなラインナップの二曲目が続くのに、精神はネガティブになっていく。思えばこのPVも、すこぶる明るいもので、たしか「HIT’S」という番組だったと思うが、初見で別人かと思うくらいの衝撃があった。

「おれは最低」や「ブルーの見解」などの自己批判とも取れる楽曲は、元春自身の当時の悩みであると言えまいか。等身大の自分を伝えることの難しさ、そこには元春の死生観すら垣間見える。

おそらくこの頃の元春は、新たな表現方法を模索していたのだと思う。バラエティに富む曲調こそが、ロックンローラーでありポップシンガーである元春の真骨頂であり、そこにのせる言葉は表現方法の一端に過ぎないのではないか。
抽象的な表現が選択する言葉は他の誰とも違うが、そこに一貫性があるのかというとそうではない。ただ、それほどとっ散らかった印象がないのが不思議で、前作と併せて佐野元春を語る上で重要な位置を占めるアルバムと言える。

そして元春は表面的には迷走していく。確固たる表現を模索しているが、ファンとして「え?」という方向性に走って行く。それが次作以降のアルバムだ。 “たぬきのMusic Chronicle~第7回~佐野元春Part4” の続きを読む

たぬきのMusic Chronicle~第4回~佐野元春Part1

昨日から、頭の中でずーっと鳴っている曲がある。

「I’m in blue」

佐野元春の三枚目のアルバム「SOMEDAY」に収録されている。
何の動機かわからないが、脳内にずっと歌詞が流れている。

今回から何回かに分けて佐野元春について書こうと思う。

佐野元春・・・1980年3月21日、シングル「アンジェリーナ」で歌手デビュー。これだけ書くと何の変哲もない。
しかし、デビュー直後からテレビ神奈川の音楽番組「ファイティング80’s」のレギュラーに抜擢されるなど、プロモーション的にはある程度恵まれていたと思われる。宇崎竜童がMCの番組で、友人に言われたので見ようとするのだが、当時UHFを見るのは難しかったのを覚えている。同年4月21日にアルバム『BACK TO THE STREET』を発表。7月から月一回、新宿ルイードでライブを始める。

新宿ルイードは当時、新宿駅前のビルにあり、それほど多くない観客の前で元春はハートランドとともにライブを行っていた。今でこそそんなパフォーマンスは当たり前だが、狭いステージを走り回り、時にはテーブルの上に立ち、時には設備の消火器に向かってシャウトするボーカルに、熱くなった。

「つまらない大人になりたくない」

どれだけそう思って、今まで過ごして来たことだろう。私はつまらない大人になってしまっただろうか、常に自問自答してしまう。この頃の元春の言葉にいろいろな想いが重なる。

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