今回の内容は「おせん」 作:きくち正太。
「おせん」全16巻
「おせん 真っ当を受け継ぎ繋ぐ。」全11巻
いずれも講談社イブニングKC刊(kindleバージョン有り)
『笠置の宿には過ぎたる花がふたつある
ひとつぁ 千成神社の弁天桜
もひとつぁ 本所百軒下田谷屋敷
江戸の北斎 京伝も
この花だきゃぁ 筆にもできめぇ
老舗花茶屋”一升庵” 暖簾に咲いた花の名は
半田仙こと 通り名 おせん
まずは衆目衆目』
上記は一巻の巻頭の扉絵に書いてある一節。
料理マンガではあるが、どちらかというと和の文化に重心を傾けた人情ものと言える。作者の趣味であろう料理・骨董などの話題が多く、その手が好きな人には堪えられないテイストである。
主人公は、一升庵という店の呑んべえで食い意地の張った天然若女将「半田仙」、通称おせんなのだが、物語は大学新卒で、甲府の旅館の跡取りでもある江崎ヨシオの視点から語られている。ストーリーは江崎が就職するところから始まり、跡継ぎに帰る直前までが綴られている。
江崎にはグリコというニックネームが付けられるが、この辺のベタさが割とツボ。そういえば、むかし「軽井沢シンドローム」でも純生クンがアサヒとかキリンとか呼ばれてたな(笑)
一升庵という店は、笠置の宿にあると言うことになっているが、当然そんなところは東京にはなく、設定としては鈴木春信の絵画にある、笠森お仙がいた谷中の笠森稲荷神社周辺がモデルと思われる。
戦争で焼けてしまったが、そこには星岡茶寮があり、一升庵の店構えはそれをモチーフにしているのだろう。