やのつまプロジェクト

「変な声で変わった曲を歌う変な人」

東京のみならず日本全国が横に激しく揺れた日、その時間、私はビルボード東京にいた。開催中止の不安もあったが、素早くスタッフがライティングなどの確認をし、ほぼ定刻にライブは始まった。

三味線プレーヤーの上妻宏光とのコラボは、異種格闘技に思えるほどだったが、それは自分の不明に過ぎないことに気がつく。

上妻宏光は、太棹をまるでブルースギター、もしくはメタルのように激しくかき鳴らす。三味線の音色なのだが、時にはファンキーさを醸し出す。

対して矢野顕子のピアノは、音階が和に傾くも洋に傾くも自在で、音色が溢れんばかりに豊かに押し寄せてくる。

大昔、山下洋輔にハマったことがあって、そのときのフリーさにも驚いたものだが、彼女のピアノは、和音のどこにこの音があるんだというほどフリー。なのに違和感は少しもない。二度同じ演奏することはできないそうだが。

特筆すべきは、前述の「変な声で変わった曲を歌う変な人」が、全くと言っていいほど違和感がなくなっていたこと。演奏力もさることながら、その声に魅了される。

透明な糸を何本もより合わせて太いロープにした状態なのに、まだ透き通っている。太いクリスタルボイスとでもいうのか、その上で和音のどこにこの音があるんだという音感。

この音感があってこそ、津軽三味線と合わせることができるのか。同行者がまだ温和しいといっていた三味線だが、充分に迫力は出ていたと思う。セットリストは次の通り。

  1. こきりこ節
  2. 弥三郎節
  3. 津軽じょんから節 旧節
  4. 津軽じょんから節 新節
  5. 海のものでも 山のものでも
  6. いい日旅立ち
  7. 田原坂
  8. 斎太郎節
  9. ソリチュード
  10. ふなまち唄(アンコール)

津軽じょんがら節の旧節と新節の奏法の違い(上妻)、いい日旅立ちだとは気付かないほどの斬新なアレンジ(矢野)、そして合作のソリチュードと来て、最後は「ラッセラーラッセラー」の大合唱。

私はいったい何のライブを見ているんだろうという、新鮮な感動があった。そして日本の民謡もなかなかに素晴らしいことを改めて思った。

矢野顕子というシンガーを初めて聞いたのは、おそらくは中学生の時。
「変な声で変わった曲を歌う変な人」というイメージで、その頃気が付かなかった才能を、30年以上も経って気付くとは思わなかった。

やっぱり音楽はいい。

※アイキャッチ画像はビルボード東京のサイトより。

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