おかしな計算

納期に遅れないように製作するのは、製造者にとって当然のことで有り、そこを基本として契約が成立している。
契約納期に間に合うように製造工程を調整し、出荷する、または工事をする。
だが、納期以外の思惑や柵ができるとトラブルは発生する。

建築現場の場合、一定の設備がそろわないと役所の検査済が下りない。
検査済が下りなければ、建築物として認められないので、その先々の工程がすべて狂う。
開業日が決まってる場合などは死活問題で、建築業者は多額の違約金を支払わなければならなくなる。

ここで、製作の流れを確認しておくが、ある受注生産の設備があるとする。
監督官庁の指導で、その設備を建築物内に設置しなければならない。
建築業者は、当然建築予算に組み入れ管理する。設置をするに当たって、プロフェッショナルである業者に発注し、業者はメーカーに発注する。

日本の流通システムにあっては、専門業者とメーカーとの間に代理店というシステムが介在することが有り、中間マージンが発生する代わりに、メーカーは専門業者の経営の危機的な状況から回避できる。
代理店はそれなりの規模であるから、回収リスクは少ない。いわば保険がかかっている。

ただ、こういったシステムの場合「伝言ゲーム」になることは多々有り、どこで誰が間違えたとか、忘れるなどのミスが発生する。
また、建築業者のカテゴライズの関係で総合商社などに発注することがある。その場合は総合商社から専門業者に発注という流れになる。総合商社にしてみればグロス受注の一部でしかない。ここにまたミスの発生する要素が増えてしまう。

前職の時のお話しだが、受注生産品を製作するに当たり、諸般の条件をデータでもらう、または現場調査するのだが、商社からの発注で、商社が指示を忘れた上に、中間業者が採寸データを間違えたらしく、設置が不可能となる。
再制作となり、納期に間に合わない。検査日は決まっている。そもそも年度末は工程も詰まっているので、各省庁もなかなか日程をずらせない。
監督官庁にかけあって、後日別途検査で帳尻をあわせる。大抵は受理されないのだがここは上手く切り抜けた。

商社が発注を忘れていた物件であり、専門業者からのデータが間違っている時点で製作側に不備はないはずなのだが、間に代理店が入れば責任の所在はうやむやとなる。
特殊な受注生産品である以上、メーカーの確認不足を追求されてしまうのがこの業界の特徴で、それを承知で受注するのだから言い訳がしづらい。製作サイドにとっては資料が揃わなかったなどの言い分はある。

検査は後日に延びたので、その検査日に間に合うように製作調整し、建築工期内に受検し、引き渡し前に検査済書も問題なく発行され、工期内に全部納まる。なんの問題もないはずなのだが、ここからが日本の複雑な流通機構、クレームが発生する。

その代理店から電話。
代理店担当者「お宅のせいで職人が3人遊んじゃうって建築から言ってきたんだよね」
正確には建築は発注カテゴライズの関係で発注先の金物店に言い、金物店がそのまま金物問屋(商社)に言い、さらに商社は代理店に言い、代理点がメーカーに言ってきたわけだ。こういうときだけ伝言ゲームは正しく伝わる(笑)
メーカー「どういうことでしょうか?」
代理店担当者「要するに値引きしろって言ってるんだと思うよ」
メーカー「はあ(さがる)」
代理店担当者「だからみんな利益から5万ずつ値引こうって話になってね」
メーカー「はあ(さがる)」
代理店担当者「ひとつよろしくお願いします」

電話が切れたあとで考えてみる。メーカーから代理店に例えば50万円で売ったとする。
代理店は商社に60万円で売り、商社は金物店に75万円で卸し、金物店は建築会社に100万円で売ったとして、各所の粗利は

  • 代10万
  • 商15万
  • 金25万

粗利率は

  • 代17%
  • 商20%
  • 金25%

さっきの話ではみんな値引きする訳だから、メーカーから代理店に45万円、代理店は商社に55万円、商社は金物店に70万円で卸し、金物店は建築会社に95万円。各所の粗利は、

  • 代10万
  • 商15万
  • 金25万

粗利率は

  • 代18%
  • 商21%
  • 金26%

あれ?これメーカーが被ってるだけ?むしろ皆さん粗利率上がってるし(爆)。

こういうことが日常茶飯事の業界って、建築だけなのだろうか。
何もしない中間層が一番得なのか。電話だけで自社の利益は確保、自分たちは絶対損をしない。
日本の流通システムがそうなっている以上、仕方のないことなのかもしれないが、商売のパートナーとして相互にリスペクトできるような仕組みは無理なのかな。

そういうことするから、販売仕切り金額が少しずつ上がっちゃうのだが、それは内緒にしといたほうがいいな。

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