たぬきのマンガ夜話~別冊~野球マンガ考察<高校野球編1~ドカベン>

先日、「ラスト・イニング」について書いてみたが、野球マンガというのは一つのジャンルが構成できるほど数が多い。力作、快作、怪作が多士済済の野球マンガについて、話を進めてみたい。

ひとえに野球マンガと言っても、その環境で大きく分類することができる。シンプルに分ければ高校野球とプロ野球だ。どちらも何しろ数が多いのでまずは高校野球編から行ってみようかと思う。

高校野球マンガと言えば「ドカベン」 作:水島新司。異論はあろうが、私の年代ではパイオニアである。

 ドカベン

「ドカベン」1巻から48巻
秋田書店少年チャンピオンコミックス刊。

この物語は中学編から始まる。鷹丘中学校に転校してきた主人公山田太郎と、もう一人の主人公といっていいだろう岩鬼正美の出会いからストーリーが進んでいく。
当時すでに、野球マンガの第一人者として活躍していた水島新司が、他紙で「男どアホウ甲子園」を連載していたために、何故か柔道マンガとして始まる。
実はこの柔道編がいい味しているのだが、ここはまた別の機会に。

ある事情で野球をやめていた山田太郎が、再び野球を始め中学の野球大会に出場する。
岩鬼の他、殿馬がチームメートとなる。殿馬は顔はアレだがいろいろと才能のあるキャラクターとして描かれ、人気を博す。
そして、高校に進学し、里中と出会う。ここで明訓四天王の誕生だ。里中のフルネームは当時親交のあった里中満智子にちなむ。

高知と言えば土佐犬とか大阪の貧乏長屋の描き方とか、ステレオタイプすぎて笑ってしまう。
山田が高校1年の時はいわゆる雑魚キャラが、本当に適当に書かれておりその辺の整合性にリアリティはない。
これが、甲子園に出て、勝ち進んでいくとキャラクターが固まってきてリアリティが出てくるのだが、この時点ではどのように収束するか考えてなかったんだろうな。

山田が1年の時には甲子園で優勝し、そのあとの神奈川のブロック大会を勝ち抜き、記憶をなくしたり、優勝旗を盗まれたり、サイドストーリーが予定調和となり、関東大会も優勝して選抜に選ばれる。
甲子園でも順調に勝ち抜き、宿命のライバル土佐丸高校と対戦するのだが、この物語のクライマックスはこの選抜の決勝だと言っていいと思う。

試合展開が長いのだが、それでも飽きさせなかったのは明訓四天王のサイドストーリーや、脇役土佐丸高校のキャラクター設定の良さ、そして最後に出る殿馬のサヨナラホームラン。
けして山田太郎だけが主人公ではない、まさに、ライバルやチームメートも含めたストーリーの紡ぎかたがドカベンの面白さであった。

そのあとは蛇足と言っては作者に失礼だが、ストーリーの面白さは薄められ、新しいライバルやキャラクターの味わいはなくなっていく。
まあ、原作もなく一人で全てをこなさなくてはならないのだから、詮無いことかもしれない。

そして山田が3年の春ドカベンが終了するのだが、長編にありがちな中だるみが長かったので、どのように終わるのか興味津々だった。
まさか里中の退部とはね。しかし、この最後のシーンはよくできていた。かなり前から決めていたらしいが。
ドカベンを象徴するようなキャラクターの引き立てかたがここにはこもっていた。

しかしこのあと、想定外の展開が。
って、次回に続く。すごく長くなりそう(笑)

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